今回は、恋、恋愛、そして人生の大切さや尊さを描いた映画『エゴイスト』をご紹介。
※魅力的な2人の役者さんをはじめ、ストーリー紹介を含む映画の感想を中心に綴っています。後半は”ネタバレあり”となっていますので、お気をつけください。
”鈴木亮平と宮沢氷魚が紡ぐ独りよがりな愛の献身”との言葉に込められた、エゴイストの意味とは――。
ゲイは身勝手なのか?独りよがりに生きてしまうのか…?、そんな作品の内面に迫っていきたいと思います。
Contents
登場人物(役者)について
わかりやすいゲイ像を表現した鈴木亮平
画像引用:https://twitter.com/egoist_movie
主人公の浩輔を演じるのはストイックさと深い洞察力でたくさんのキャラクターに命を吹き込んできた鈴木亮平。本作では強さと脆さを同居させた生々しい芝居で新しい境地を開拓した。
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鈴木さんがゲイ役を演じると聞き、どんな風にお芝居をするのだろう?と思いながら映画を見ていましたが、わかりやすいゲイ像を表現してくれていました。
ゲイではない人もゲイの世界が少し垣間見れた作品に仕上がっていると感じます。
浩輔のオネエのような口調も振る舞いも歩き方も、僕のお仲間さんにいらっしゃるような感じなので、ゲイの人も楽しめる人物を演じてくれたのがうれしかったです。
かわいくてまっすぐな青年”龍太”を演じる宮沢氷魚
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浩輔の恋人である龍太役には話題作への出演が続く宮沢氷魚(みやざわ ひお)。その透明感あふれる儚い佇まいが愛を注がれるピュアな青年というキャラクターに輝きを増している。
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…かわいい。
まっすぐな青年としてお芝居し、挨拶もしっかりして元気があり、爽やかでお話するだけで気持ちがいいオーラに包まれます。
映画では、パーソナルトレーナーや売り専などの仕事をしながら浩輔に恋し、一人でお母さんを支える役なのですが、こんなパーソナルトレーナーがいたらいいのに…と思うような好青年でした。
浩輔へ甘えるときは無邪気でかわいいし、”ここは違う”という時はしっかり主張し、自分の足で歩いている様子が伺えました。
※パーソナルトレーナーとはマンツーマンでトレーニングや食事などの管理・指導をする人。龍太は、知人を通じてパーソナルトレーナーとして浩輔と出会いました。ちなみに、出会った当初はもちろん売り専のことはナイショにしていました。
第三のキーパーソン・龍太の母(阿川佐和子)
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妙子は、浩輔の人生観に影響を与えるキーパーソンともいうべき人物。
龍太が守るべき母親という存在。そして、恋人の浩輔は幼いころに母親を亡くしている。ある意味、2人にとって”母親”とも言える彼女の存在が
…物語の後半、ストーリーに大きく関わってきます。
映画『エゴイスト』あらすじ
画像引用:https://twitter.com/egoist_movie
14歳で母を亡くし、田舎町でゲイであることを隠して鬱屈とした学生時代を過ごした浩輔。
今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仕事が終われば何でも分け隔てなく話せる友人たちと楽しい時間を過ごしている。
そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである母を⽀えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。
自分を守る鎧のようにハイブランドの服を着こなし、気ままながらもどこか虚勢を張って生きている浩輔と、最初は戸惑いながらも浩輔から差し伸べられた救いの手をとった、自分の美しさを知らない健気な龍太。
惹かれ合った2人は、時に龍太の母も交えながら満たされた時を過ごしていく。
亡き母への想いを抱えた浩輔にとって、母に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし彼らの前に突然、思いもよらない運命が押し寄せる――。
・浩輔(鈴木亮平)について
幼少期はイジメにあいながらも、勉強をし、母を亡くしながらも東京で成功した努力家でありプライドの高い男。いわゆる成功者。
・龍太(宮沢氷魚)について
将来に対する夢はあるものの、パーソナルトレーナーとは名ばかりで、売り専でお金を稼ぎ母の面倒を見る健気な息子。
感想:ややネタバレあり(ご注意ください)
ゲイへの理解ある言葉から泣きそうに
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この映画のなかで一番印象に残っているところは、龍太のお母さんが浩輔へ言った言葉
「相手が男の人でも女の人でも、そんなことどうでもいいじゃない。本当に大切な人ができたのなら、それでいいじゃない」
というシーンです。
※もう、このシーンでこのセリフを聞いた瞬間、心にじーんと響くものがありまして、感動しました。
こんなにもゲイに関心があり、肯定してくれる存在がいることがうれしくて、泣きたくなる衝動に駆られました。
多様性とは言われ続けていますが、まだゲイにとりまして生きていくには肩身の狭い想いで暮らしている人も多いと思いますので、とても共感した場面でした。
※ただでさえ相手を認められない、認めることに時間がかなる社会なので、ゲイとして生きていくには大変なことで、自分がゲイだとわかってほしい、理解してほしい、仲良くしてほしいと願い、行動することは、とてもつらい気持ちで歩みを進めるときがありました。
劇中、龍太のお母さんが、いかに息子のことを思って声をかけてきたか、全部受け入れて抱きしめながら生きてきたか、その様子が伺えたシーンでした。
愛とはなんだろう?
この作品のエゴイストは、劇中の浩輔のことだと思いますが、浩輔が相手(龍太)へのお礼としてお金をプレゼントするシーンが何回もあります。
※もう売り専をしないでほしいという思いから、足を洗わせるためにお金を上げるのです。
浩輔自身も、「僕は愛がわからないんです」というセリフを言っていました。
浩輔は大きな会社に入って給料をたくさんもらっていて、持っている洋服のほとんどが高級ブランドのもの。住んでいるマンションもとても素敵な部屋で、大きなリビングがあり絵画が飾ってあり、浴室がおしゃれですごい広々としています。
※食べるものも飲みものも高級なもので、そのブランドを語ることが浩輔は好きなようで、得意気にブランドについて語る場面がよく登場します。
画像引用:https://twitter.com/egoist_movie
このシーンを見ながら、僕も”お金があれば幸せになれる”と思っていました。
お金があれば生活に困らないし、楽しいことができるし、貯金もできるから幸せだと思っていました。
けれど、この映画エゴイストを見ていると、劇中で浩輔は欲しいものにたくさん囲まれているのに、最愛の彼氏が亡くなってしまったり、いらいらしている様子が伺えて…
実は、あまり幸せじゃないのかもしれないと思いました。
愛のこたえ
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この映画の最後のシーンに、龍太のお母さんが末期がんのステージ4で病院のベッドにからだを横にしている場面があります。
それは、浩輔が病室から離れ自宅へ帰ろうとするとき…
龍太のお母さんが、「もう少しそばにいて」と言います。すると、浩輔はお母さんの呼びかけに「はい!」と答えます。
もう、これが愛とは何だろう?の答えだと思いました。それは、相手が欲しいものは物じゃなくて、”やさしさ”なのだと。
やさしさだとか思いやりだとかは、目には見えないものでわからないときがありますが、決してお金では購入できない大切なもの。
自己中心的に相手へプレゼント(お金)を贈るのではなくて、相手は何を望んでいるのか、相手を思いやる気持ちが必要なんだと思いました。
※浩輔が最後のシーンで「はい!」と返事したシーンがとても印象的で、龍太のお母さんへ素直になれた感動的なシーンだと思いました。
過激なシーンが満載
劇中で映画エゴイストでは、ゲイならではの描写をたくさん使っています。
ゲイの飲み会ではお仲間さん同士がオネエ言葉でおしゃべりをしたり、手で口を隠したり、ボディタッチをしたりというシーンがたくさん登場します。
※オネエ言葉を使う人は確かにいらっしゃいますが、個人的には僕の周りの人はあまりオネエ言葉を使う人は少ないので、映画エゴイストの演出でゲイだということがわかりやすいように、オネエ言葉を使ったのかな?と感じました。
また、浩輔と龍太が恋をしてお付き合いをするのですが…
恋が盛り上がりセックスをするシーンがたくさんありまして、肌と肌がぶつかりあうシーンがあり、とても印象的でした。
かなり、からだを密着して撮影していたのでびっくりしてしまいました。
アダルトものを見ているようなシーンがたくさんあり、うれしいようなドキドキするような感覚になりました。エロいものが好きな人にも喜んでいただける作品です。
※俳優さんはすごいなあと思いながら見ていましたね。
ゲイ友は本名で呼び合う?
画像引用:newTOKYO
ただ、気になったのは、ゲイ友を呼ぶときは、仮名かハンドル名などで呼び合うことが、僕の周りでは多いのですが…
映画では本当の名前で呼んでいまして、なんか違うかなと正直、思いました。
映画としてわかりやすくしたのかもしれませんが、ゲイの世界とは少し違うかな?という違和感を感じるシーンもありましたね。
大絶賛の作品
映画エゴイストは上映後も数々の賞を獲得し、ロングランの上映となりました。
現在は、Blu-rayとDVDが発売中。ゲイのみなさんもそうではない人も楽しめる作品となっております。
ぜひ、チェックしてみてください。
数々の名コラムを世に送り出してきた故・高山真の自伝的小説『エゴイスト』を原作とし、『トイレのピエタ』や『ハナレイ・ベイ』など人の心の澱を深く抉る作品で知られる松永大司監督が、ドキュメンタリータッチの映像で登場人物たちの間に流れる親密なぬくもりや、愛ゆえに生まれる葛藤を繊細に表現した、2人のゲイにまつわる恋愛映画。