ゲイ×ノンケ映画『窮鼠はチーズの夢を見る』が伝える孤独感・焦燥感の先にあるもの

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』

今回は、BL系漫画が原作の映画『窮鼠はチーズの夢を見る』をご紹介。

関ジャニ∞の大倉忠義さんと、成田凌さんが主演した作品で

ノンケサラリーマン・大伴恭一と、彼のことが好きな大学時代の後輩でゲイ・今ヶ瀬渉の触れ合いを濃密に描いた映画です。

※映画版の脚本は『窮鼠はチーズの夢を見る』とシリーズ完結編である『俎上の鯉は二度跳ねる』がミックスされた内容になっています。

漫画は過激な性描写が特徴で「このBLがやばい!2010年」で1位になりました。いわゆるエロBL系が原作なんですね。

あらすじ

サラリーマンの大伴恭一は7年ぶりに再会した大学時代の後輩・今ヶ瀬渉にゆすられていた。理由は恭一の不倫。

こだわりがなく流されやすい恭一は、女性に言い寄られると断りきれずに簡単に不倫を繰り返していた。

今ヶ瀬は興信所に勤めており、偶然にも恭一の妻・知佳子に依頼された浮気調査を請け負っていたのだった。7年前から恭一のことを想っていたという今ヶ瀬に、不倫の事実を妻に報告しない代償として「恭一のからだが欲しい」と要求されてしまう。

挿入無しの体の関係を恭一は受け入れ、不倫調査は誤魔化してもらえたものの、既に恭一との関係に冷めきっていた知佳子は別れたいと申し出、夫妻は離婚。

それから2年が経ち、恭一は今ヶ瀬と関係を続けながらも、ノンケとして女性に目を奪われることがいつものことだった…。

引用:Wikipedia

なかなか自分のものにできない今ヶ瀬や、ノンケの恭一が、他の女性にも心を奪われていったりと、いろいろ複雑に絡み合うストーリー。

ゆえに”女性目線”の切り口も多い作品となっています。

物語の中心となる男性2人について

大倉忠義さん演じる『大伴恭一』

大伴恭一(大倉忠義)

画像引用:ラジトピ

見るからにノンケという役で、たくさんの女性から言い寄られる男性を演じています。スーツ姿が印象的でいつもクールという振る舞い方。

一方で、相手からの言葉や態度から流されやすい人物としても描かれています。

※ノンケ役が男前でモテるっていう設定はチェリまほの黒沢にも通じる部分がありますね。

成田凌さん演じる『今ヶ瀬 渉』

今ヶ瀬 渉(成田凌)

画像引用:https://twitter.com/kyuso_movie

かわいい。

最初ミステリアスな雰囲気を出していて、大学生のような幼さが残る子犬みたいな容姿をして、半ズボンを履きTOOTのパンツを身につけたりして、体育座りをしながら椅子に座りたばこを吸うその姿は一見、やんちゃのようでキュート。

ゲイ受けしそうな見た目でとても好感が持てました。

※ちなみに、劇中では洗濯機に恭一のパンツを入れるシーンがあるのですが、そのパンツを嗅いだり、自分のパンツを脱いだ今ヶ瀬の綺麗なからだと小さなおしりが映し出されるシーンはエロく、たまりませんでしたね。

印象に残っているシーン

ゲイに投げかけられる汚い言葉

夏生(さとうほなみ)

画像引用:https://twitter.com/kyuso_movie

今ヶ瀬と大伴と大伴のことが好きな女性(元カノ・夏生)が一緒にレストランでお酒を飲む場面があるのですが、女性がゲイの世界を「どぶ」と発言しています。

作中で語られる”どぶ”という表現は、グリム童話『ハーメルンの笛吹き男』を引用したもので、笛吹き男が街で悪さをするネズミを笛で川に誘導し溺死させたというお話から「恭一(大伴=ネズミ)を”どぶ”に溺れさせるわけにはいかない」というセリフを口にしています。

ゲイ当事者からすると、強烈なインパクトがありまして、ひどい憤りを覚え、見ていて悲しみに包まれました…。

そんなにまで、ゲイのことを汚い”どぶ”に例えて今ヶ瀬へ言わなくてもいいのに、そこまでにしてこの女性は大伴を自分の彼氏にしたいのかと思い、憎しみさえ感じました。

いわゆる”マウント女子”って感じですね。「どぶ」という表現も彼女なら言いそう…。

※この彼女は大伴のことを”自分の彼氏であり、自分のものだ”と言わんばかりに、今ヶ瀬に闘争心をめらめらと燃やし今ヶ瀬と戦っている攻撃的な女性でしたね。

火花を散らす、…まさに嫉妬の嵐のレストランのお酒の席。作品を見ながら「今ヶ瀬がんばれ!負けるな!」とゲイなら応援したくなるシーンでしたね。

もちろん、今ヶ瀬のほうも女性と対等に会話を通して戦っていて、思わず熱が入りました。

今ヶ瀬が自分にもプライドがあるんだ、おれも大伴が好きなんだという想いが伝わってくるようで、熱いものを感じましたが、やはり口喧嘩とはいえ、怖かった。

※女性のも今ヶ瀬のほうを凝視して、自分の目を大きく見開き威嚇していたのが、やはり怖かった。これが修羅場であり、強烈な嫉妬心のかたまりのようなシーンでしたね。

今ヶ瀬も大伴のことが好きな女性も、お互いに”お前にわたさない!”という強い意志が感じられ、ドキドキして怖くてとても心象に残るシーンになりました。

孤独感・焦燥感からのふたりの絡みあいがエロい

物憂げな今ヶ瀬

画像引用:https://twitter.com/kyuso_movie

女性との修羅場を終えてからのシーン。

今ヶ瀬がひとりになりドリンクを飲むシーンがあるのですが、それが孤独感漂う悲しくて淋しそうで、見ていてつらいものがあり…

ゲイの誰にも理解してもらえない孤独感を表現したような場面で記憶に残りました。

一方、大伴はその女性とのSEXで勃たず、彼女が激怒しホテルの部屋から離れます。すると大伴は、今ヶ瀬のところへ。

・・・

ふたりはキスをして抱きあいベッドの上で結ばれるのですが

ランプシェード

そのシーンが部屋の外がかなりの雨が降っていて、部屋の明かりは薄暗いなか、悲し気なBGMが流れている中、2人のSEXシーンが映し出されます。

…もう、この場面がすごいエロかった。

※今ヶ瀬の綺麗なからだと腰使いが絶妙でヤバいです。男性を好きになったノンケ大伴の複雑な心境が、激しいSEXと激しい雨降りから伝わってくるようでした。

鑑賞後の感想

恋は苦しい。けれど、それだけじゃない

恭一と今ヶ瀬

画像引用:https://twitter.com/kyuso_movie

ノンケを好きになることは、ゲイにとってつらいものだということがこの映画を見て感じることができます。

そして、”恋愛ってなんだろう?”と改めて考えさせられた映画です。

好きな人と両想いになれて一緒に生活をしていても、悲しみや苦しみからは、逃れられないのだと知りました。

普段の生活でも悲しいことや苦しいことがあるのに、人を好きになって相手からの言葉ひとつに振りまわされて、さらに苦しくなる。

…けれど、苦しい恋のなかにも喜びがあり、幸せがあるものだと、この映画では伝えています。

※「あなたのことを嫌い」というセリフは、必ずや相手のことが嫌いというわけではないし、もっとかまってほしいからわざと「嫌い」と言ったり、自分の想いとはまったく逆の言葉を伝えてしまうのは、好きだからとか素直になれない心情から垣間見えたものがありました。

映画の登場人物の、自分との葛藤が見事に表現され、改めて恋愛は難しいものだと思いました。

正直、見ていてとてもつらい映画でした。

けれど、つらい想いがあるからこそ恋が成就できたときはうれしく、その喜びに満ちたシーンがとてつもなく綺麗に表現された作品だと言えます。

恋は苦しい。けれど、それだけじゃないんだよと、教えてくれました。

誰かを想いながら

好きな人と見てもいいと思いますし、これからの季節、誰かを想いながらこの映画を見ると、よりいっそう切なく愛おしくなります。

ぜひ、チェックしてみてください。

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』公式サイト

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』公式サイト
https://happinet-phantom.com/kyuso/