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おすすめのゲイドラマ
前回の「おっさんずラブ」に引き続き、おすすめのゲイドラマをご紹介。
ドラマにもいろんなタイプがあると思いますが…
少しセンチメンタル…
「なんとなくおセンチで、静かな夜にひとりでしっとりと見たい。」
失恋した人、恋に悩んでいる人、そんな”ハートブレイク気味”な人に、そっと寄り添ってくれる… 大人のドラマを取り上げます。
ポルノグラファー
制作 | フジテレビ |
放送期間 | 2018年8月8日〜9月12日 |
出演者 | 竹財輝之助・猪塚健太・吉田宗洋ほか |
BL漫画が原作となっている作品ですが、それだけで毛嫌いするのはちょっともったいない。数あるゲイドラマの中でも、一味も二味も違う“深み“を持った作品。
ちなみに、現在までに大きく3作品がテレビや映画で映像化されています。
・ポルノグラファー(2018・テレビ)
・ポルノグラファー 〜インディゴの気分〜(2019・テレビ)
・劇場版ポルノグラファー 〜プレイバック〜(2021・映画)
※超短編は除いています
あらすじ
官能小説家・木島の腕を骨折させてしまった大学生・久住春彦。治療費の代わりにと口述筆記での代筆を行うことになった。淫らな文章を読み上げる木島の声に、密かに興奮しつつも黙々と官能小説を書き上げていく、男二人の奇妙な共同作業。次第に久住は木島のことを「もっと知りたい」と思うようになっていく。ある日いつものように二人が作業していると、突然一人の男が部屋に入ってくる。木島の担当編集者だというその男・城戸と、木島の親しげな様子に嫉妬のような気持ちを抱くと共に、木島に対する興味を更に深めていく久住。一方、木島は何かを隠し、久住を翻弄するかのような態度を続けていく・・・。骨折した腕はいずれ治り、二人の共同作業は終わる。果たしてその時、二人が迎える運命とは――。
設定としては地味なんですが、出演者に女性の登場はほぼゼロ。
男性陣も必要最低限の脇役はいますが、ほとんどは久住春彦、木島理生、城戸士郎の3人のみで展開していきます。
※それでいて30分×6話分のボリューム。
飽きさせず、より引き込まれていく魅力はどこにあるのでしょうか?
90年代ミニシアター系映画を彷彿とさせるシュールで独特な世界
ポルノグラファー(2018・ドラマ)より
この作品は物語も面白いですが、何よりも独特な雰囲気が魅力的。
例えば、それはフランス映画が持つ雰囲気だったり、ウォン・カーウァイの『恋する惑星』や『ブエノスアイレス』のような”僕と君”だけの世界。
劇中でかかる音楽も物悲し気なピアノのみ。
ただし、主題歌の「Twilight Dreams / 鬼束ちひろ」はドラマにぴったりの名曲です。
全体的に静かなんだけど、そのセリフの一言一言が、まるで小説の朗読のように、頭の中に響く。
※昨今よくあるテンポの速いドラマや、間合いのない台詞回しとは逆を行く”大人な演出”のドラマ。
日本で言えば、やっぱり岩井俊二さんの『リリイ・シュシュのすべて』や、中島哲也さんの初期作品『Beautiful Sunday』なんかのテイストも感じます。
それ以外にも、竹久夢二のような大正ロマン的なレトロな雰囲気も漂う、オシャレかつモダンな側面もあるように思います。
ミステリアスな男・木島理生(きじまりお)
官能小説家・木島理生
この作品の深みを解説する上でかかせないのが、木島の存在。
彼はかなりミステリアスな男なんですが、主人公でありながら彼の主観的描写は少なく、主に大学生・久住春彦からの目線で語られていきます。
※だからこそ、この木島が一体何を考え、どう行動しているのか?をドラマの上でうまくオブラートに隠しながら、時間が徐々に経過していくにしたがって見えてくるという構造。
もちろん、官能小説作家という事から、セリフ回しもどこか文学&哲学的。
ゆったりとしながらも、妙に色っぽい声と間合いで語りかける姿は、唯一無二。彼の持つニヒリズム的な思考も相まって、どんどん”木島ワールド”に魅了されます。
※見始めた頃は、彼はゲイなのか?バイなのか?ノンケなのか?それすらも分からないまま、だけどそんな予感を匂わせながら不気味にミステリアスに物語は進みます。
真面目な好青年・久住春彦(くずみはるひこ)
大学生・久住春彦
木島とは対極的な存在である久住。
そもそも彼が木島に怪我をさせてしまった事や、慰謝料を払えない事から、お世話をするうちに木島の持つ世界観に引き込まれていき、彼を好きになってしまいます。
対極的な二人だからこそすれ違っていく。だけど対極的だからこそ惹かれ合う。
…矛盾してるんだけど、恋愛ってそんなもんだよなぁ。
なんて思えてくるし、こうした心情を、”品の良いテイスト”でやさしく視聴者に語りかけてきてくれる作品なんです。
※この雰囲気やミステリアスな物語は、男女間の恋愛ドラマでは、到底表現できない世界だと感じます。
妄想か現実か?木島と久住の絡みシーン
ちなみに、ポルノグラファーはがっつり”絡みのシーン”も。
ゲイドラマではあまり描かれないセクシーで魅力的な場面も、たっぷり出てくるので、そういう意味でも見応え十分だと言えますね。
木島の過去を知る男・城戸士郎(きどしろう)
編集者・城戸士郎
「ポルノグラファー(2018・テレビ)」では、あまり大きく絡みませんが、城戸は木島にとっては大切な存在の一人。
脇役ですが、彼が登場する事によって、少しピリっとしたムードが出ます。
と、思うかもしれませんが…
この物語のさらに以前の世界を描いた続編「ポルノグラファー 〜インディゴの気分〜」では、城戸が木島の相手役を務めています。
今の木島を作ったのは、城戸といっても過言ではないのです。
※個人的には、この続編の方が面白いと思ってます。
なので、見る順番としては…
↓
「ポルノグラファー(2018)」
こっち方が、城戸士郎の位置付けがより明確に分かるんですよね。それも含めて、城戸士郎にも注目です。
※実際、城戸ってゲイに一番モテそうなタイプだし、ヒゲもセクシーですしね。体つきもいいんですよ。
ポルノグラファー 〜インディゴの気分〜
制作 | フジテレビ |
放送期間 | 2019年7月24日〜8月28日 |
出演者 | 竹財輝之助・吉田宗洋・大石吾朗ほか |
木島と城戸の関係性がさらによく分かる続編。
一見、スピンオフのように見えますが、こちらもがっつり全6話。いかに2人がゲイの世界に入り込んでいくのかが分かる作品です。
あらすじ
ポルノ小説の編集者・城戸は、恩師の葬儀で大学の同級生だった純文学作家の木島と再会する。創作に行き詰まり困窮している様子の木島に、城戸はポルノ小説の執筆を依頼してみるが、出来は濡れ場が5行で終わる始末。そんな折、木島は城戸の頼みで大御所ポルノ作家・蒲生田に弟子入りすることに。「悪趣味で鬼畜」と有名な蒲生田に“あること”を命じられた二人は、一線を越えた関係になってしまう・・・。
先ほどもお伝えした通り、時間軸としては最初の作品のその前の時代のお話。
※木島がいかにして官能小説家になったのか?それまでの2人にどんな事があったのかが解き明かされていきます。
ゲイとして、人として、将来について、人生について、一作目よりも扱うテーマも大きく、さらに深い内容となっています。
キーマンは、鬼畜ジジイこと”蒲生田先生”
官能文学の大家・蒲生田郁夫
2人は、この蒲生田郁夫(がもうだいくお)に会ったことによって大きく運命を狂わされます。
しかしながら、彼がいなければ「ポルノグラファー 〜インディゴの気分〜」は始まりません。かなりの強者であり、物語のキーになる存在です。
※逆に一作目で登場した大学生・久住春彦は、当たり前ですがほとんど出演しません。
演じる大石吾朗さんの声や仕草、顔立ち、非常に素晴らしいです。
ここまで存在感のある役者は、他にはなかなかいないような気がします。ドラマの中では、「美味しんぼ」の海原雄山を彷彿とさせる大御所感。
※それに加えてセクシーさを兼ね備えた魅力ある存在でした。
木島と蒲生田
「お前、アイツのチンポ… しゃぶれるか?」
こんな事、いきなり言ってくる爺さん、なかなかいませんよ。それにしても、渋くていい声してるんですよね。蒲生田先生…。
「ポルノグラファー」を見てみよう
ポルノグラファー(FOD)
フジテレビの動画配信サービスFOD(フジテレビオンデマンド)で、絶賛配信中。
無料で見ることはできませんが、気になった方はぜひ。
※今回、映画「劇場版ポルノグラファー 〜プレイバック〜」のご紹介はできませんでしたが、そちらは木島と久住のその後の世界を描いた作品。ほっこりとする内容で少しパンチはないですが良作です。